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ドーナツ少女
行列が出来ているドーナツ屋
おいしいわけじゃないけどなんか並んだ
日本だけだってこんなに並ぶの
ドーナツなんか食べたいわけじゃなかった
何やってんだろうって電車の中で泣いた
もっと好きなものを食べたり
好きなことをすればよかったんだ
って食べてから思った
悔しくて奥歯が虫歯になりそうだった
帰ったらドーナツ食べたの?って母に聞かれた
ドーナツおいしかった?って夏に聞かれた
おいしかったんじゃない?
よくわかんないよって雑に答えた
ドーナツなんか好きじゃない
そうは言えなかった
だって母は私のことドーナツが好きな子だと思ってる
あぁ、ちくしょう
ドーナツにとらわれた私
丸い穴から出られない
なんだか背丈が小さくなった
灯が消えた日
気づいたら
静かな日に 灯は消えていた
残ったのは 残り香と ぬるい室温だった
真夏日
体は丸くなっていた
おなかや おしり だけじゃなく
指から足の裏、 骨まで
すべてが緩いカーブを描いた
愛を感じても
宙返りできない心
布団には僕の背中の形
癒したのは 道でティッシュを配っていた
女の笑顔とふくらはぎだった
灯はいつか消えてしまった
僕は尖ったものが欲しい
三角定規 ナイフ プライド とんがりコーン
なんでも良い
仕事とか 恋とか ギャンブルでも
それは良いかもしれない
灯をつけよう なんて 野暮なこと言わない
灯をつけろ なんて 無理なこと言わないで
自然と灯がつく日まで
この体が冷え切るまで
ニート
蟻
若鶏のから揚げ
海から穏やかな潮風が吹いて
日焼けした肌に少し染みる
僕は波の向こう側に何かを探していた
しかし何かをつかんだとき
太陽は沈み、世界は深い闇に包まれた
何も見えなくなってしまった砂浜
でも誰かが地平線の向こう側で
笑いながらささやいた
僕は聞き逃さなかった
昔から世界にはいろんな人がいる。
ひとつのことに情熱を燃やした人、
人生かけて恋をした人、
目に見えるもの全てを嘘だと疑った人。
歴史とは人の積み重ねで
君はその歴史のかけらにすぎない。
瞬き一つせずに聞いていた僕は
ちょっと機嫌が悪くなった
そんなこと、3億年も前から知っているさ
目の前の波は同じことを繰り返していた
僕もいつもと同じように時計を見てから家に帰ることにした
今日の夕飯は何だろう
きっと僕の好きな鶏のから揚げだと
いつものように思った